The Grasshopper meets the Hare

世界で一番自由奔放なキリギリスと、世界で一番のオッチョコチョイのウサギが語る、ニュースを明るくするブログです

日本農業に必要なのは『有事自給率』の考え方だ (2/2)→(2/3)

昨日の続きです。

昨日は平時の自給率など何の意味もなく、『有事自給率』というものを高めることが、日本の農業の進むべき道だと書きました。

ここで、有事自給率の言葉を定義ですが、「日本の輸入が完全になくなった前提における、生存に必要なカロリーベースの最大自給率」とします。

ここのキーポイントは3つです。

  1. 日本の輸入が完全になくなった前提:食糧輸入だけでなく、原油などエネルギーも輸入できない場合を想定します。

  2. カロリーベース:有事の時は「生産額」など何の意味もないので、国民が生きていくために必要なカロリーをどれだけ生産できるかを見ます。

  3. 最大自給率:これは、現状の農地で算定するのではなく、短期間に農地に変更できるところは農地に変更したり、農作物も出来るだけカロリーの高いものに切り替えるという前提で算出します。有事にはそれぐらいするでしょうから。さらに、現代の過食ベースのカロリーではなく、生存に必要なカロリーをベースにします(有事の時に過食する人は、さすがに非国民でしょう)

さて、この前提を置くと、日本の有事自給率はどれぐらいになるのでしょうか。

  • 原油の輸入が止まる仮定なので、農業機械はガソリンなど使っていてはいけません。全て電気自動車に変更です。 原油がストップした場合、日本の電力のエネルギー源は、全体の10%程度を占める自然エネルギー(水力が主)と『重要なベースロード電源』たる原子力だけです。原子力は、震災直前の2010年度で3割程度なので、もう少し割合を増やして5割にしたとすると、自然エネルギーと合わせ有事前の6割程度をカバーできます。よって、確保できるエネルギーは6割に落ちる、と考えます。

  • 次に、減反してしまった農地も元に戻しましょう。減反した面積というのは農林省も公表していないのですが、少々古いデータでみると、水田面積240:減反面積100といった感じです。減反分を元に戻すことで、(240+100)/240=1.4倍と4割ほど面積が増えます。

  • さらに、野菜など商品作物を作っている畑を片っ端から高カロリーの田んぼに変えていきましょう。 2011年現在の耕地割合データからすると、

種類 割合
54.2%
普通畑 25.5%
牧草地 13.5%
樹園 6.7%

ということですので、この「普通畑」を片っ端から田んぼにします。すると、田んぼ割合は、54%→80%と1.5倍になり、5割面積が増えることになります。この結果カロリーがどれぐらい増えるかは難しいところですが、取りあえず3割アップぐらいにはなるものとしておきましょう。

  • 品種も、味よりも量重視。とにかくたくさん取れるものとして、みつひかりにしましょう。5割増収です。

  • また、廃棄はゼロにしましょう。高月紘 『ごみ問題とライフスタイル』によれば、廃棄割合は38.8%ということですので、廃棄率を10%ぐらいに抑え込めば、自給率は(1+0.388)/(1+0.1)=1.26倍に上がります。

  • あと、現代日本人は、2割ぐらい過食だと想定します。

さあ、これらの施策を講じることで、有事自給率はどうなるか。

有事自給率=カロリーベース自給率×エネルギー係数×耕地面積係数×増収係数×廃棄割合改善係数        ×過食割合補正

     =39%×0.6×(1+0.4+0.3)×1.5×1.26×1.2

     =90%

と算出されます。9割とはスゴイです。日本は、その気になれば、輸入ゼロでもかなりの割合で食べていけるんです!多少エネルギーを食料生産に回せば、有事自給率100%も夢ではないですね。

ということで、有事自給率を求めたところで、お時間になりましたので、続きはまた明日。 (2回で書こうと思っていましたが、さすがに重いテーマだけに、3回シリーズになりますね。)

ではまた、ぐ~ぴょん